こんにちは。てあつい整体院の佐伯です(柔道整復師・国家資格保有)。
当院には、
「長時間座っていると腰が重くなる」
「立ち上がるときにズキッと痛む」
「病院では「異常なし」と言われたけれど、痛みが取れない」
といった、深刻な悩みを抱えた多くの患者様が来院されます。
実は、そのしつこい腰痛の本当の原因は、あなたが思っている場所とは違う「神経の疲れ」にあるのかもしれません。
今回はそのメカニズムを、専門家の視点から徹底的に解説していきます。
強いストレスが「腰を守るスイッチ」を入れる
人はストレスを感じると、脳の扁桃体が危険を察知し、「身を守れ」という信号を発します。
その指令が、脳の視床下部を経て交感神経に伝わることで、体は“緊張モード”になります。
このとき筋肉は無意識に収縮し、外敵から体を守ろうとします。
特に腰まわりは「姿勢」や「内臓・脊髄」を守る重要なエリア。
つまり、ストレスを感じて腰の筋肉が硬くなるのは、体が自分を守るための自然な反応なのです。
しかし、この状態が長く続くと交感神経が常に優位になり、筋肉の血流は低下。
老廃物や炎症物質がたまり、神経が過敏化し、やがて慢性的な腰痛ループが生まれます。
感覚情報の不足が「防御システム」を起動させる
実は、脳が「危険」と判断するのは、痛みだけが理由ではありません。
体性感覚(筋肉・関節・皮膚からの情報)や、視覚・前庭覚(バランス感覚)といった身体のセンサー情報が不足することでも、脳は不安定さを感じて防御反応を起こします。
たとえば、長時間のデスクワークやスマホ姿勢では、視覚や前庭覚の刺激が極端に減少します。
さらに、体を動かす機会が少ないと、筋肉・関節・皮膚から脳への入力(体性感覚)が低下します。
この「感覚入力の減少」によって、脳は身体の位置や安全性を正確に把握できなくなり、“危険かもしれない”と誤作動して筋緊張を高めるのです。
つまり、情報不足=不安定と判断した脳が、腰を硬くして守ろうとする。
これが「感覚情報の低下による防御システム」の正体です。
脳・神経・筋肉がつくる「防御のループ」
腰痛は「筋肉」だけの問題ではありません。
その裏では、脳と神経の間で防御のループ(神経反射)が働いています。
ストレスや感覚情報の低下によって興奮した扁桃体は、視床下部を介して自律神経を刺激し、腰や背中の筋肉を収縮させます。
すると、過度な緊張状態が脊髄や脳幹に「痛み信号」として再入力され、脳が「この硬さが安全だ」と誤学習してしまいます。
つまり、脳は「腰を固めておく=危険回避」と勘違いし、筋肉を緩められなくなるのです。
この神経的防御ループが続くことで、どれだけマッサージをしてもすぐ戻る“慢性腰痛”が起こります。
根本改善のカギは「脳と神経の再教育」
てあつい整体院では、こうした防御反応をリセットするために、脳神経・自律神経・筋肉・感覚入力の連携を整える施術を行っています。
ただ筋肉をほぐすのではなく、「脳が安全と感じられる身体環境」を再構築していくアプローチです。
施術では、姿勢や呼吸、骨盤の動き、眼球運動、前庭反応などを丁寧に評価し、
一人ひとりの体が“守り”から“回復”へ切り替わるサポートを行います。
まとめ
腰痛は、あなたの体が危険を感じて「守ろう」としているサイン。
しかし、その防御反応が長く続くと、脳と神経が誤学習を起こし、痛みを固定してしまいます。
また、体性感覚・視覚・前庭覚といった感覚情報が不足すると、脳は不安定さを感じてさらに筋緊張を強めてしまいます。
だからこそ必要なのは、筋肉だけでなく、脳・神経・感覚入力レベルで防御のループを断ち切るケアです。
あなたの腰痛を「脳神経から変える」ことで、本当の回復を目指しましょう。
いかがでしたでしょうか?
てあつい整体院では、神経学や解剖学に基づいた施術を行っています。
不調の背景は単純ではなく、生活習慣や体質、脳神経・筋膜・骨格・ホルモンなどが複雑に関係しています。
だからこそ私たちは、評価 → 施術 → 再評価を重ね、リセット → 学習 → 定着のプロセスを大切にしています。
その積み重ねを通じて「心身のバランスが整い、再発しない体づくり」をサポートしていきます。
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