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脳と筋膜からみる腰痛治療

家事や育児と腰痛の関係——繰り返す動作が痛みを招く仕組み

こんにちは。てあつい整体院の佐伯です(柔道整復師・国家資格保有)

当院には、
「朝から家事をこなすたびに腰が悲鳴をあげる」
「立ちっぱなしで料理や片付けをしていると腰がズーンと重くなる」
「子どもや孫を抱っこするたびに、湿布や薬ではもうごまかせなくなってきた」
そんな日常に悩まされている多くの患者様が来院されています。

実は、そのしつこい腰痛の本当の原因は、あなたが思っている場所とは違う「神経の疲れ」にあるのかもしれません。
今回はそのメカニズムを、専門家の視点から徹底的に解説していきます。

家事や育児でなぜ腰痛が起こりやすいのか?

毎日の「抱っこ」「前かがみ」「掃除」「買い物袋を持つ」といった動作は、腰に繰り返し負担をかけます。
特に45〜55歳女性では、筋力低下やホルモンバランスの変化も重なり、腰痛が慢性化しやすくなります。
一回一回の負担は小さくても、積み重ねが腰の神経や筋肉に影響を与え、痛みが抜けにくい状態をつくってしまうのです。

繰り返す痛みの仕組み「中枢性感作」とは?

痛みは単純に「腰の筋肉や骨から出ている」とは限りません。
近年の研究では、繰り返す痛み刺激により脳や脊髄の神経が過敏になる現象が確認されています。これを中枢性感作と呼びます(国際疼痛学会 IASP の定義)。

中枢性感作が起きると、本来なら痛くない刺激でも痛みを強く感じるようになり、慢性腰痛が長引く原因になります。

脳での痛みの処理——インプットとアウトプット

痛みの認識は、ただ腰から脳へ信号が届く単純な仕組みではありません。

  • インプット: 腰の神経や組織からの情報が脊髄を経て脳に伝わる
  • 統合と解釈: 脳は感覚入力に加えて「記憶・感情・予測」などを統合し、「これは危険な刺激かどうか」を判断する(Melzackのニューロマトリックス理論)
  • アウトプット: その結果、「痛みの認識」や「体を守るための動きの制限」が起こる

この仕組みがあるために、一度“危険な刺激”と脳が判断すると、実際には大きな損傷がなくても痛みの信号が強く出され続けることがあります。
つまり、脳が「まだ危険だ」と認識し続ける限り、痛みのアウトプットが繰り返され、腰痛が慢性化してしまう原因になるのです。

言い換えると、痛みは“腰そのもの”だけではなく、脳の判断によって繰り返されることがあるのです。

腰痛を改善するために大切なこと

① 生活習慣の工夫
台所や掃除で前かがみを減らす、荷物は両手で分散して持つなど姿勢の工夫をしましょう。

② 神経のリセット
繰り返す痛みを減らすには、筋肉や骨格だけでなく「神経」へのアプローチも必要です。

③ 脳と身体の再学習
痛みを軽減しつつ正しい動きを繰り返すことで、脳は「もう危険ではない」と再学習していきます(Moseley & Flor 2012)。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
てあつい整体院では、神経学や解剖学に基づいた施術を行っています。
不調の背景は単純ではなく、生活習慣や体質、脳神経・筋膜・骨格・ホルモンなどが複雑に関係しています。

だからこそ私たちは、評価 → 施術 → 再評価を重ね、リセット → 学習 → 定着のプロセスを大切にしています。
その積み重ねを通じて「心身の変化」を実感し、あなたらしい日常を取り戻していただけるようサポートいたします。

※効果や体感には個人差があり、必要に応じて医療機関の受診をご案内します。

参考文献

  • Woolf CJ. Central sensitization: Implications for the diagnosis and treatment of pain. Pain. 2011;152(3 Suppl):S2–S15. PubMed
  • Melzack R. Pain and the Neuromatrix in the Brain. J Dent Educ. 2001;65(12):1378–82. PubMed
  • Moseley GL, Flor H. Targeting cortical representations in the treatment of chronic pain. Neurorehabil Neural Repair. 2012;26(6):646–652. PubMed
  • IASP Terminology: Sensitization / Central Sensitization. IASP公式サイト