こんにちは。てあつい整体院の佐伯です(柔道整復師・国家資格保有)。
出産後、多くの女性が
「腰の痛みがなかなか取れない」
「骨盤が不安定で体が支えにくい」
といった、深刻な悩みを抱えた多くの患者様が来院されます。
実は、そのしつこい腰痛の本当の原因は、あなたが思っている場所とは違う「ホルモンや脳神経、さらに栄養状態」にあるのかもしれません。
今回はそのメカニズムを、専門家の視点から徹底的に解説していきます。
なぜ産後に腰痛が起こりやすいのか?
多くの方が、産後の腰痛に悩まされています。
そもそも、なぜ腰痛が起きる背景を解説します!
- ホルモン変化:出産直後、エストロゲンやプロゲステロンが急激に低下し、関節や靭帯がゆるみやすい状態になります。これが骨盤の不安定性を招き、腰への負担を大きくします。
- 脳と神経の変化:妊娠・出産を経て、母体の脳は「育児モード」に切り替わるため、大きな神経可塑性が起こります。この柔軟な時期は新しい役割に適応する力を持つ一方で、ストレスや睡眠不足により腰痛や自律神経症状に傾きやすいのです。
- 筋力低下:妊娠中から産後にかけて腹筋や骨盤底筋の働きが弱まり、体幹の安定性が低下します。その結果、腰椎や仙腸関節に負担が集中しやすくなります。
神経可塑性と産後腰痛
神経可塑性とは、脳が経験や環境に応じて回路を再編成する力のことです。
特に産後は、母体の脳が育児に適応するために大きな構造的・機能的変化を示します。
- 妊娠後期から産後にかけて、大脳皮質の体積や厚さが変化し、不要な回路を刈り込み必要な回路を強化する「シナプスの剪定」が起こります。
- 前頭前野や扁桃体、海馬などが再編成され、育児の判断力や情動コントロールが強化されます。
- 一方で、この「柔軟な脳」は同時に脆弱でもあり、睡眠不足やストレスが続くと痛みや不安が増幅され、腰痛の慢性化につながることがあります。
ホルモン変化と腰痛
産褥期は、女性の人生で最も急激なホルモン変化が起こる時期です。
この変化は筋骨格系だけでなく神経系や感情にも影響を与え、腰痛を悪化させる要因になります。
- エストロゲンとプロゲステロンの急低下:これにより靭帯のゆるみが増し、骨盤が不安定になります。また、セロトニンやドーパミンの働きが乱れ、一時的な気分低下(マタニティブルー)や腰痛の悪化を招くことがあります。
- オキシトシンとプロラクチンの増加:授乳や母子の絆に関わるホルモンですが、自律神経や感情の安定にも作用します。これらがうまく働かない場合、身体の感覚(内受容感覚)が乱れ、痛みの感じ方が強くなる可能性があります。
栄養とフェリチンの重要性
産後の女性は、出産時の出血や授乳による鉄需要の増加で鉄不足・たんぱく質不足(フェリチン値の低下)になりやすい傾向があります。
フェリチンは体内の「鉄の貯金」であり、これが不足すると疲労感や集中力低下だけでなく、筋肉や神経の働きにも影響し、腰痛の回復を妨げることがあります。
- 出産時の出血により鉄が大きく失われる。
- 授乳によって1日0.3〜0.5mg程度の鉄が母乳に移行するため、慢性的に不足しやすい。
- フェリチン低下は血清鉄が正常でも起こるため、気づかれにくい。
栄養面でのおすすめ!
- 赤身肉やレバー、魚介類などのヘム鉄を中心に摂取。
- ほうれん草や大豆製品などの非ヘム鉄は、ビタミンCと一緒に摂ることで吸収が向上。
- 鉄分摂取と同時にコーヒーや紅茶(タンニン)、乳製品(カルシウム)を避けると吸収効率が高まる。
骨盤矯正だけでは改善しない理由
「産後は骨盤矯正をすればいい」という考え方は不十分です。
- 骨盤を整えても、ホルモンの乱れや神経の不安定さ、さらには鉄・たんぱく質不足があれば、腰痛は再発しやすいのです。
- 骨盤周辺の「骨盤底筋や腹横筋」の機能低下、自律神経の乱れを放置すれば、骨盤矯正の効果も長続きしません。
つまり、産後の腰痛改善には「骨盤 × 筋肉 × 神経 × ホルモン × 栄養」という総合的な視点が欠かせないのです。
当院で行う産後ケアのアプローチ
てあつい整体院では、産後の腰痛改善のために以下の多角的アプローチを行っています。
- 骨盤矯正:トムソンベッドを用いて骨盤の歪みを整え、腰への負担を軽減します。
- インナーマッスル強化:EMSを活用して、弱った骨盤底筋や体幹筋を効率的に鍛えます。
- 神経へのアプローチ:鍼灸やTNブレインで自律神経を整え、ホルモン変動やストレスからくる腰痛を改善します。
- 栄養アドバイス:必要に応じて鉄分補給や食生活改善の提案を行い、体の回復をサポートします。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
てあつい整体院では、神経学や解剖学に基づいた施術を行っています。
不調の背景は単純ではなく、生活習慣や体質、脳神経・筋膜・骨格・ホルモンなどが複雑に関係しています。
だからこそ私たちは、評価 → 施術 → 再評価を重ね、リセット → 学習 → 定着のプロセスを大切にしています。
その積み重ねを通じて「心身の変化」を実感し、あなたらしい日常を取り戻していただけるようサポートいたします。
※効果や体感には個人差があり、必要に応じて医療機関の受診をご案内します。
参考文献(学術論文)
- 妊娠および産後期における脳の可塑性:母親の養育行動とメンタルヘルスとの関連. 『フロンティアズ・イン・ニューロエンドクリノロジー』,バルバ=ミュラー, E., クラドック, S., カルモナ, S., & フークゼマ, E. (2019).https://doi.org/10.1016/j.yfrne.2019.01.001
- 妊娠・出産・産後における女性の神経可塑性. 『ニューロサイエンス&バイオビヘイビアラル・レビューズ』,パテルニナ=ディエ, M., フークゼマ, E., & バルバ=ミュラー, E. (2023)https://doi.org/10.1016/j.neubiorev.2023.105279
- 科学研究費補助金研究成果報告書 (2018). 産後骨盤アライメントの変化と産後の骨盤痛との関係(課題番号16K20807). https://kaken.nii.ac.jp/…/16K20807seika.pdf
- 産後貧血 I:定義、罹患率、原因、およびその結果. 『アナルズ・オブ・ヘマトロジー(血液学年報)』, 90(11), 1247–1253.ミルマン, N. (2011). https://doi.org/10.1007/s00277-011-1279-z
- 妊娠における鉄欠乏管理に関する英国ガイドライン. 『ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ヘマトロジー(英国血液学誌)』, 188(6), 819–830パヴォード, S., ダル, J., プラサンナン, N., ロビンソン, S., スタンワース, S., & ガーリング, J. (2020)..https://doi.org/10.1111/bjh.16221