MEDIA

脳と筋膜からみる腰痛治療

深刻な腰痛と呼吸の関係 — 横隔膜と神経から読み解く“痛みブレーキ”とは

こんにちは。てあつい整体院の佐伯です(柔道整復師・国家資格保有)。
当院には、

「朝から腰が固まる」

「長時間座ると重だるい」

「湿布やマッサージでは戻ってしまう」

といった、深刻な悩みを抱えた多くの患者様が来院されます。
実は、そのしつこい腰痛の本当の原因は、あなたが思っている場所とは違う「神経の疲れ」にあるのかもしれません。

今回はそのメカニズムを、専門家の視点から徹底的に解説していきます。。

なぜ呼吸が腰痛と関係するのか

横隔膜は「呼吸筋」であり「体幹安定筋」

横隔膜は肋骨だけでなく腰椎(L1〜L3)へも付着します。呼吸が浅く横隔膜が硬くなると、多裂筋・腹横筋・骨盤底筋との連携(インナーユニット)が崩れ、腰椎の微細な安定性が低下。結果として動くたびに腰へ負担がかかりやすくなります。

呼吸パターンの崩れ → 姿勢・自律神経の悪循環

  • 肩や首ばかりで吸う胸式呼吸が増える
  • 息を止めるクセがつく(集中・緊張・スマホ操作時)
  • 身体が興奮状態になる自律神経が続き、腰背部の筋緊張が慢性化、痛みに過敏になる

この悪循環は「寝ても抜けない腰のハリ」「朝のこわばり」につながります。

呼吸と脳神経:迷走神経・自律神経・延髄(脳幹)の役割

延髄(脳幹)は“呼吸の司令塔”

呼吸は肺が勝手に動くのではなく、延髄(脳幹)の呼吸中枢がリズムを作り、横隔膜・肋間筋へ指令を送って起こります。

したがって、安定した呼吸=脳幹の安定化につながります。

迷走神経は“リラックスの神経”

ゆっくり長く吐くと横隔膜がゆるみ、迷走神経(リラックスのための自律神経)が働きやすくなります。

  • 心拍が落ち着く・筋緊張が緩む
  • 消化が促進され、全身が「安心・安全モード」へ
  • 睡眠の質が上がり、回復力が高まる

つまり、呼吸は脳幹と迷走神経を介して全身を落ち着かせるスイッチ

その結果、腰の過緊張と痛みの長期化を防ぎます。

“痛みブレーキ(下降性疼痛抑制)”という考え方

難しい言い方では「下降性疼痛抑制系」。ここでは“痛みブレーキ”と呼びます。
深く穏やかな呼吸で迷走神経とリラックスのための自律神経が働くと、脳幹〜大脳の「痛みブレーキ」が入りやすい状態になり、痛み信号を脳が過剰に受け取りにくくなります。

  • 浅い呼吸・息こらえ → 興奮する交感神経が優位 → 痛みブレーキが利きにくい
  • ゆっくり吐く呼吸 → 迷走神経、リラックスする自律神経が働く → 痛みブレーキが入りやすい

だからこそ、「呼吸を整える=痛みの感じ方を整える」というアプローチが慢性腰痛に有効です。

最後に

いかがでしたでしょうか?

てあつい整体院では、神経学や解剖学に基づいた施術を行っています。

不調の背景は単純ではなく、生活習慣や体質、脳神経・筋膜・骨格・ホルモンなどが複雑に関係しています。

だからこそ私たちは、評価 → 施術 → 再評価を重ね、リセット → 学習 → 定着のプロセスを大切にしています。

その積み重ねを通じて「心身の変化」を実感し、あなたらしい日常を取り戻していただけるようサポートいたします。

※効果や体感には個人差があり、必要に応じて医療機関の受診をご案内します。

8. 参考文献

  • Hodges PW. Core stability and the role of the diaphragm. Br J Sports Med. 2005.
  • Hodges PW, Gandevia SC. Activation of the human diaphragm during postural tasks. J Physiol. 2000.
  • Courtney R, Cohen M. Investigating breathing pattern disorders and musculoskeletal dysfunction. Man Ther. 2011.
  • Porges SW. The Polyvagal Theory: neurophysiological foundations of emotions, attachment, communication, and self-regulation. 2011.
  • Kjaer M et al. Textbook of Sports Medicine: Basic science and clinical aspects of sports injury and physical activity. (横隔膜・体幹機能の章)

※一般的な生理学・神経科学・運動器の教科書と総説に基づく解説です。診断や治療は個別の評価が必要です。